参院議員の公設秘書の50代男性(故人)から2020年3月、取材で会った際に性暴力を受けたとして、報道機関に勤務する元記者の女性が8日、国に慰謝料など1100万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。原告弁護団は「性的暴行やセクハラが横行する報道現場では、自由な取材活動や報道が担保されない」と訴える。

 訴状などによると、この男性は当時、前埼玉県知事上田清司参院議員の公設秘書を務めていた。元記者は政治取材をしていた20年3月24日、埼玉県内で、飲酒を伴う会食の場に同席して新型コロナ対策について取材。その後タクシー内などで、この秘書から、体を触られるなどのわいせつ行為を受けた▽その3日後にも県内で、この秘書から上田氏の動向に関して情報提供すると呼び出され、多量の酒を飲まされ抵抗できない状態で性的暴行を受けた――としている。

 元記者は20年4月1日、県警に被害届を提出。秘書は20年8月20日に準強制わいせつ、準強制性交容疑で書類送検されたが2日後に自殺し、不起訴となった。元記者はその後、PTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断された。

 国家賠償法では、国家公務員が職務上、違法に他人に損害を加えた時は国に賠償責任があるとしている。原告側弁護団は、秘書が情報提供をするとして呼び出し、大量に飲酒させて性暴力に及んだことは職務権限を乱用した不法行為にあたる▽上田氏も秘書への監督権限の行使を怠った――などと主張。いずれも特別職の国家公務員である公設秘書と上田氏が職務上違法な行為をしたとして、国を相手に訴訟を起こした。

 元記者は「自殺に追い込んだ記者という見られ方をして3年間つらかった。今回の提訴で自分が被害者だということを分かって欲しい」などと報道各社にコメントを寄せた。

 上田氏の事務所は「訴訟の詳細は承知していないので分かりませんが、基本的人権も含め、女性に対するあらゆる暴力、パワーハラスメント等は許されるものではないと考えます」とのコメントを出した。

 記者への公務員による性暴力をめぐっては、長崎地裁が22年5月、女性記者が07年に長崎市の男性部長(故人)から受けた性暴力が職務に関連した違法行為だったと認め、市に約1975万円の支払いを命じた。市側は控訴せず、判決は確定した。(西田有里、仁村秀一)

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